芸術作品の価値について考えるにあたって

ポール・ゴーギャン 「ひまわりを描くゴッホ」 1888

芸術作品の価値を数値化するプロセスについて考えた場合、アーティスト、コレクター、美術商、鑑定士など、誰に尋ねるかによってその意見は違ってきます。芸術作品の価値は一般的に美的価値と経済的価値の組み合わせによるものと考えられるでしょう。美術商は芸術作品の価値を数値化するための判断材料について問われた時、美的価値と経済的価値両面を考慮することの重要性を訴えるでしょう。しかし、それでも個人的にはその芸術作品を自分のコレクションの一つとして加えるかどうか検討する場合、私たちはまず作品の美的価値を優先すると思います。

単なる投資としてではなく、その芸術作品を芸術として取得するのであれば、まずそのスタイル、媒体、主題、形、色等が、一体何を自分に語りかけてくるのかどうかを考えるのです。そのアーティスト、作品、そしてその芸術家の視点に親近感を感じることができるのかどうか。その作品は時が経過しても自分を魅了し続けるのだろうかなど。その作品が自分にもたらす美的価値をまず考慮し、決断した後、あらためて経済的側面を検討し始めます。 「この作品を所有し、展示することで、支払った価格と同等の、あるいはそれ以上の喜びを得ることができるだろうか。」と自らに問いかけるのです。その質問に対する答えが「イエス」であった時初めて、その作品の経済価値側面の要点をより深く掘り下げ始めるのです。

最高級芸術界では、作品の経済的価値は、主に芸術家の名前、信憑性、来歴、状態、主題、需要、および希少性によって決定されます。ほとんどすべての分野の市場価値と同様に、供給に比べ需要が大きければその価格は上昇します。一時市場では、アーティストが自分で価格を設定するか、あるいは代理人と相談して価格を設定する可能性があります。一時市場は、アーティストがまだ健在であり、創作の改善に力を入れ、新作を生み出し続けていることを前提として価格が設定されます。従ってアーティストの死後、当然作品数は有限となるので、流通市場では価値が高まる可能性があるでしょう。これはある意味健在のアーティストにとって経済的に不利な影響があるかもしれないということです。つまり、現在オークションで法外な価格で売られている作品を制作したアーティストは生前わずかな認識や評価しか得られなく貧しくして亡くなって行ったかもしれないということです。たとえば、上の写真のポール・ゴーギャンの作品で、フィンセント・ファン・ゴッホを題材にしています。2018年のオークションで売られたゴーギャンの作品価格は40億円でした。2017年に行われたオークションでは、ゴッホの作品は109億円で買われました。悲しいことに、両方の男性は現在ある名声を得ることなく貧困で亡くなりました。

オークションハウスにかかわらない一般の芸術作品愛好家たちは、今健在しているアーティストを見つけ出すことをお勧めします。アーティストのスタジオを訪れ、アートウォークに行き、ギャラリーイベントに参加し、アーティスト自身と話し、いわば彼らの世界観に引き込まれてください。アーティストが自分の作品に帰する価値を学びましょう。ほとんどの場合それは、アーティストが自らの創造物に同化していくといった、精神的なイメージを具体的な形に形作るプロセスです。生きているアーティストと交流し、そのアーティストに投資するということは、必然的にアートの世界全体に貢献するということです。究極的には、芸術作品の価値はその製作者、そして製作者の想像に共感する鑑賞者の両方が作り出すものだと思います。

Tenpo Gallery

Tenpo Gallery was founded in 2021 as a tribute to Julian Togashi who died in 2017 at the age of 27. The goal of the gallery is to foster Julian’s philosophies of cultural awareness, creativity, and mentorship.

http://www.tenpogallery.com
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